エクストリーム遠征記 レイクタホ in USA(Feb.1998)

 レイクタホというのはネバダとカリフォルニアの州境に存在する湖である。この湖の周りの山々が西部有数の豪雪地帯であり、スキー場が多く点在する。カリフォルニアというと温暖なイメージがあるが、標高が非常に高いので(1500m-3000m)海岸沿いでは雨でもタホでは雪が降るというわけだ。
 レイクタホというのは土地の名前であってスキー場の名前ではない(「白馬」みたいなもの)。代表的なスキー場としては、ヘブンリーバレー、スコーバレー等がある。ヘブンリーバレーは非常に景色がよいということで有名。スコーバレーはいつだったかの冬季オリンピック開催地である。
 K氏と私がレイクタホを選んだ理由は、スコーバレーである。ここは知る人ぞ知るエクストリームスキーのメッカなのだ。国内のようにパトロールの目を盗んで、ちまちまとしたオフピステを探し回らなくても、山全体が巨大なオープンコースとなっていてガキからおっさんまで誰もがクリフを飛んで楽しんでいる、という噂に我々の心は引きつけられた。ちなみにオリンピック開催地なんていうことは実は全然知らなかった。(^^;

 今回は5泊6日の予定で出かけた。出発が夕方でさらに移動に1日ずつかかるので、滑れるのは3日間という事になる。
 宿泊は州境のStateLineにあるカジノホテルで、スキー場へはバスに乗って出かける。日本のようにゲレンデのそばにホテル街が形成されているわけではない。ちなみに、StateLineのホテルはみんなカジノホテルだ。ネバダ州はカジノが解禁されているので、州境にはサンフランシスコあたりからの客を当て込んだカジノホテルがいっぱい建っている。本当に州境ぎりぎりの所に建っているので(50mくらい)単純というか、非常に分かり易い。当然、反対側の州境であるところのCrystalBayにもカジノがある。

 さて、ここからが肝心のスキーの話である。せっかくだから3日間でヘブンリーバレー、カークウッド、スコーバレーの三つのスキー場へ行くことにした。カークウッドとスコーバレーへ行くバスは予約が必要、ヘブンリーは必要ない。1日目の予約は既に取れなかったので、自動的にヘブンリーとなった。で、2日目がカークウッド、3日目がスコーバレーという予定となった。

・1日目 ヘブンリーバレー


 宿泊のカジノホテルからのバスは所要時間5分くらい。30分おきに出ているので特に何も考えずに行くことができる。
 ちょうどカリフォルニアで大雨が降って洪水が起きていたときだ。レイクタホはすぐ近くなので似たような天気になる。つまり最悪。昼過ぎからは吹雪といった感じになってきた。という訳でこの日の写真は無し。

・2日目 カークウッド...

 あまり聞き慣れないスキー場だが、現地の人に聞くと誰もが「ここはすごく良い!」と太鼓判を押してくれるスキー場。なんでも西部で一番積雪量が多い所なのだそうだ。10mとかいう単位で雪が積もっているらしい。とにかく、「パウダーならここ!」なのだそうな。

 前日の天気は吹雪だった。ということは今日はスペシャルお楽しみデーということになる。朝、どきどきしながらTVのお天気Ch.をみる。アメリカの天気は温度が °F、積雪がftで表されるので非常にわかりにくい(ちなみにカナダはメートルの国だ)。なになに...新雪が50"...?え〜っと...約1.2m! 我々は色めき立った。
 が、しかし!世の中はそんなに甘くはない。1日1往復しかないバスの運転手曰く、

「道路が通行止めで今のところ通れない。」

がぁ〜〜〜〜ん。なんてこったい。スキー場に雪が降れば周辺の道路にも雪が降るのは確かに道理ではあるが...
で、バスの運転手続けて曰く

「が、除雪作業が順調にいけばそのうち通れるようになるかもしれない。とりあえず行けるところまでつれていってあげるけど、スキー場にたどり着けるかどうかは補償できない。」

 たどりつけなかったら、バスに乗ったまますごすごと引き返してくるわけだ。周りを見てみるとほとんどの人がキャンセルにかかっている。当然だろう。バスに乗ってうろうろしているだけで午前中が終わってしまう確率が非常に高いのだ。
 しかし!我々は当然のように「行く!」と宣言した。スーパースペシャルパウダーワールドを目の前にするチャンスなのだ。少々のリスクなんて屁みたいなものだ。

 ところが.....結果はハズレ。結局スキー場までたどり着けなかった。てなわけでこの日も午後からヘブンリーへ出かけたのである。

 前日に一度滑っているので、スキー場の大体の感じはつかめている。まっすぐにMOTT CANYON(map左上部の◆◆の谷)へ向かった。

 写真やゲレンデマップを見てもわかるように、ヘブンリーは林が多い。だだっ広いオープンゲレンデはなく、林の中にコースを作って、はい。という感じで日本のスキー場と似ているといえば似ている。が、ツリースキーやり放題で、ちょっと開けたところにはこんな岩場がゲレンデ内に堂々とごろごろしているのだ。似て非なるものといえよう。日本のスキー場にまねをしろとはいわないが、こっちの方が何倍も楽しいことは事実だ。

 半日しか滑れなかったし、この日も午後からはそれほど天気が良くなく、あまり写真を撮る気にならなかった。というわけでギャンブルな2日目はおしまい。

・3日目 スコーバレー!

 さて、いよいよお待ちかねのスコーバレー! (ちなみに、字面"SquawValley"を見ると"スコーバレー"と読めるが、現地での発音を聞いていると"スコアバレー"が正しいらしい) 日頃の行いがちょっとだけ良かったのか朝からピーカン、スキー日和だ。

 ここはヘブンリーとは非常に対照的な、どでかいオープンゲレンデがどど〜んと横たわっている。あたり一面雪だらけなので、非常に明るい。何となく陽気なカリフォルニアっぽい雰囲気のするゲレンデだ。頂上からはレイクタホの湖が見える。

 また、頂上でこんな写真も撮った。

 左側がK氏で、右側のターミネーターみたいなおっさんはここのパトロールだ。写真を撮った後、
K氏:「ここのクリフはすげーよ!」(彼は会う人ごとにこれを繰り返す)
パト:「そうだろ。でもあっちへ行ったらもっとグレートなヤツがあるぜ、ジャパニーズガイ。がんばれよ!」
てな会話をかわす。日本ではとても考えられない会話内容である。

 で、パトロールが抱いている犬、なんとこれが噂に聞く「雪崩救助犬」だ! ゲレンデ内でも万が一に備えて待機しているのである。何ともたのもしい限りではないか。
 こういうまじめに安全を考える姿勢があるからこそ、「CLOSED」のロープに重みが出るのである。何でもかんでも張っとけば良いってモンじゃない。

 「CLOSED」のロープといってもスキー場の境界線以外にはほとんど見あたらない。断崖絶壁のクリフがあっても、「WARNING」の看板が立っているだけである。

 こんなところでも滑った後が大量に残っているところがなんともはや。自分たちも含めてアホだらけである。


 雪庇からえいやっと飛び出したところ と、着地に失敗して転がり落ちているところをくっつけてパノラマ風にしてみた。かなりの急斜面なので着地の衝撃はほとんど無いが、転倒すると遥か下の方まで転げ落ちてしまう。



 圧雪されていない巨大なオープンゲレンデでかっ飛ばすのは非常に楽しい。木の間を縫うようにすり抜けるのも楽しいが、こういうワイルドな楽しみの方が壮快感がある。
 写真の解像度がいまいち不足しているのは、距離が遠すぎるせいである。カメラマンが先に降りていって下で待ちかまえるわけだが、調子に乗って降りすぎてしまうのだ。(^^;

 で、スキーの写真はやっぱり難しい。今回の撮影機材は3倍ズームの35mmコンパクトカメラである。これを交互に持ち歩いて撮影した(前回は「写るんです」でかなりひどい写真を撮ったK氏が、今回なんと「何も持ってこなかった!」という暴挙に出たせいである。しかしこれが幸いして写真が多少マシに撮れている)。
 コンパクトカメラでスキーの写真を撮ると、ほぼ例外なく露出オーバー気味に撮れてしまうので(「写るんです」よりははるかにマシだが)、スキャナで取り込んだ後にかなり気合いを入れて補正をかけた。これ以上きれいに撮ろうと思ったら一眼レフを持ち歩くしかない。これはかなり勇気がいる。
 後は構図の問題。クリフの写真が飛んでるように見えない。鬼のような急斜面もただの平地に見える。等々は機材云々以前のカメラマンの腕の問題だ。雑誌などの写真を見て研究してみてはいるが、どこからどうやって撮ったのかよくわからない写真が多い。絶壁を滑り降りるよりよっぽど奥が深そうだ。


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